SECRET COCKTAIL
「なにしてんだよ」
突然降ってきた声に、ハッと意識を向ける。
視界に映ったその人は無表情のまま階段を降りて来て、私たちの間を割くようにして扉の前に立ち、ブルゾンのポケットから鍵を取り出して扉を開けた。
「ま、さ君」
「今日は店開けるつもりなかったけど、どうすんだよ。入んのか」
自分は店内に入りながら、チラリとこちらに視線を寄越す。
帰って来たんだ。
どうしようもない安堵感の中、なんだかまた涙腺が緩みそうになる。
当然入ってしまいたかったけれど、こんな時に雅君の後を追える訳がない。