SECRET COCKTAIL
触れたグラスは温かくて。
冷え切った指先に熱を分けてくれる。
口に含めば、赤ワインと甘酸っぱいレモンの優しい味が喉を潤して、心地よい温もりを身体の奥に届けてくれた。
そんな優しい温もりに、泣きたくなった。
私は、いつだって。
こんな風に、雅君を困らせる事しかできない。
ただ傍にいたい、という私の一方的な想いは。
結局私の独りよがりで、所詮我儘でしかない。
雅君は、お兄ちゃんに頼まれたから、仕方なく私の面倒を見てくれているだけなのに。