SECRET COCKTAIL
「・・・帰った」
「は?入れ違いかよ。参ったな、早く顔見たかったのに。つーか、店休みなのか?表クローズだったけど」
「ああ、今日はな。とりあえず、おかえり穂積。良く来てくれたよ」
そう言って近寄って来た雅弥と、ハグを交わす。
「まぁ、座れよ」
と促されて、カウンターのスツールに腰かけた。
木の滑らかな手触りのカウンターに指を這わせて。
カウンターだけライトに照らされた店内をぐるりと見渡す。
店は暗いままだけど。
相変わらずセンスの良い店内は、客にとっても居心地が良いに違いないだろうと分かる。
この店に来ると、いつも妙に誇らしい気持ちになる。
それは、カウンターの中の男に対するものもあるけれど、決してそれだけではなかった。