SECRET COCKTAIL
オールド・ファッションド・グラスに氷を入れ、ビター・ベルモットとスイート・ベルモットを注いで。
炭酸水でグラスを満たした後に、レモンの皮を絞る。
周囲にレモンの爽やかな香りがふわっと舞った。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
コースターにグラスを置くと、相手はそれを持ち上げて。
「頂きます」
行儀よくそれを告げてから、ゆっくりとグラスを傾けた。
きっとこの男なら、美來を幸せにしてくれるのだろうとなんとなくそう思った。
きちんとした会社に勤めて。
美來の仕事の事も良く理解している。
初めは軽そうなノリのこの男に牽制を掛けたりもしたけれど。
こいつはそれに怯む事もなく、誠実な態度を見せ続けた。
この男なら、俺だけでなく穂積だって美來の彼氏として認めるだろうと、そんな風に思った。