SECRET COCKTAIL


「美味しいです」


カクテルを飲んでから、爽やかな笑みを浮かべて律儀に感想を言う。



悪いヤツではないと思う。

いや、寧ろ良いヤツなんだろう。



根性もあるし、誠実さも感じる。

そして、何より一途だ。


それがここ数日彼を見ていて感じた印象だった。

俺に認められたいという、真摯な想いもビシビシ感じる。



初めは簡単に彼女を見送るつもりはなかったし。

何より彼女が他の誰かと付き合いたいなんて言うはずがないと、心のどこかで思っていた。


彼女が何かしらの想いを自分に向けてくれているのは気付いていた。

ただそれが、純粋な恋愛感情というよりは、幼い頃の憧れに似た感情なんだろうという事も。



彼女から向けられる純粋な好意を感じてはいても、それを受け入れる事は考えられなくて。


だけどそのまっすぐな想いを、自分に向けてくれるという心地良さを手放したくはなかった。

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