SECRET COCKTAIL
kir
仕事を終えて、待ち合わせの場所に急ぐ。
久しぶりに外で飲もうなんてお兄ちゃんに誘われて、初めてのお店の扉を潜った。
お兄ちゃんが来た時に一緒に飲むのはいつも雅君のお店だったから、こうして別のお店で待ち合わせするのはなんだか不思議な感じがする。
「おう、美來、こっち」
お兄ちゃんに指定されたのは雰囲気の良い、スペインバルで。
待ち合わせをしていると告げて店内に入ると、カウンターにすでにお兄ちゃんが座っていた。
「ごめんね、待った?」
「いや、俺も来た所だよ」
お兄ちゃんの隣のスツールに腰かけると、お兄ちゃんが飲み物のメニューを差し出してきた。
「料理は適当に頼んだ。飲み物は?どうする?」
「うーん。ワインも飲みたい気がするけど、初めはビールで」
「いいね、俺も同じ」
そのまま店員さんを呼ぶと、すぐに注文してくれた。