SECRET COCKTAIL


「そろそろ、他の酒頼むか」


「うん、そうだね」


私がビール一杯飲み終わる前に、すでに三杯もビールを飲んだお兄ちゃんが私にメニューを差し出すけれど。


「お兄ちゃんに任せる」


どうせ見てもよく分からないから、注文は私の好みを良く知るお兄ちゃんに任せる事にしてメニューを返した。


その意図を汲んだお兄ちゃんは、受け取ったメニューをぱらりとめくってから少し考えるそぶりをして。



「キールを二つ」



と店員さんにオーダーした。


「キール?」


小さな声でお兄ちゃんに問う。



「ああ、雅弥の店名の由来になったカクテル」



それを言われて、ぎゅっと胸が痛くなった。

< 281 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop