SECRET COCKTAIL
「そろそろ、他の酒頼むか」
「うん、そうだね」
私がビール一杯飲み終わる前に、すでに三杯もビールを飲んだお兄ちゃんが私にメニューを差し出すけれど。
「お兄ちゃんに任せる」
どうせ見てもよく分からないから、注文は私の好みを良く知るお兄ちゃんに任せる事にしてメニューを返した。
その意図を汲んだお兄ちゃんは、受け取ったメニューをぱらりとめくってから少し考えるそぶりをして。
「キールを二つ」
と店員さんにオーダーした。
「キール?」
小さな声でお兄ちゃんに問う。
「ああ、雅弥の店名の由来になったカクテル」
それを言われて、ぎゅっと胸が痛くなった。