SECRET COCKTAIL


『Bar Kir』



それがカクテル名から付けられたのだろうと思ってはいたけれど、今までそれを飲んだ事はなかった。


目の前に置かれたのは、ワイングラスに入れられたルビー色のカクテル。


「カシスリキュールと白ワインを混ぜたカクテルだよ」


とお兄ちゃんが教えてくれる。



別にこれ自体が雅君と関係ある訳ではないのに、手にした一杯がとても大切な物のように感じてしまう。



そして、そのカクテルを口に含んだだけで。

なんだか雅君に近づけたような気になるから、私もとことん単純だ。



「雅弥となんかあったのか?」



唐突なお兄ちゃんからの質問に、咄嗟に動きが止まる。


「・・・・・」


言葉を返す事が出来なかった。

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