SECRET COCKTAIL
だって、なにかあったと言うよりは。
私が一方的に雅君を困らせたというだけなのだから。
言葉に詰まる私をチラリと見て。
お兄ちゃんは小さく溜息を零す。
「お前、彼氏ができたって雅弥に言ったんだって?」
「・・・うん」
「でも、違うよな?数日お前を見てたら分かる。会社終わったら真っ直ぐ家に帰って来て。デートする訳でもなけりゃ、電話する訳でもメールする訳でもない。本当に彼氏がいたら連れてこいって言うつもりだったけど、ずっとそんな気配はないし、暗い顔したままだし。彼氏なんて本当はいないんだろ?」
畳み掛けるようなお兄ちゃんの言葉に、小さく「うん」と頷いた。
私の変化に敏感なお兄ちゃんに、隠し事を出来る訳がなかった。
「なんでそんな事言ったんだ?」
それを聞かれて、思わず俯いてしまう。