SECRET COCKTAIL
「だって・・・」
「うん?」
お兄ちゃんが優しく相槌を打つから。
つい涙腺が緩みそうになってしまう。
「いつも困らせる事しかできないから」
「困ってるって、あいつが言ったのか?」
「ううん。でも、困った顔をするの。それに、私が付き纏ってたら、雅君の迷惑になるから」
「迷惑だって、あいつが言ったのか?」
「言わないよ。雅君は優しいから、そんな事言わない。私がお兄ちゃんの妹だから、責任感で面倒見てくれているだけなのに、これ以上負担になりたくないから」
「だから、彼氏が出来た、なんて言ったのか?」
「・・・そう」
小さな声で答えると、お兄ちゃんはまた小さく息を吐いてから、グラスを口に運んだ。
そして、掴んだままのグラスをゆっくり回す。
真剣な表情でグラスをみつめている横顔は、初めて見るような表情だった。
どこか切なそうな、何かに想いを馳せているような複雑な表情で、何を考えているのかは分からない。