SECRET COCKTAIL
「は?美來?」
「ま、雅君」
どきどきする鼓動が収まらなくて、服の上から胸を抑えた。
「どこか、行くの?」
ブルゾンを手に掴んだままの姿を見て、そう聞いたのに。
「いや、行く必要がなくなった」
なんて、そんな事を言う。
だって、札はクローズだし、店内の電気は消えてるし、明らかに出かける準備をしていたはずなのに。
「入るか?」
「いいの?」
「当たり前だろ」
なんだかいつもより、雅君の声が優しく聞こえて、胸がきゅっと音を立てた。