SECRET COCKTAIL
「本当に美味しかった。雅君、ご馳走様」
相変わらずリゾットは美味しくて。
緊張で元気がなかったはずの胃袋にもすんなりとおさまった。
あまりに美味しくて、幸せな気持ちを隠せないまま笑みを浮かべて雅君を見上げると。
あまり感情の起伏を見せない雅君が、一瞬だけ照れ臭そうに口元を緩めるのが分かった。
すぐにその表情は消されたけれど。
それだけで充分雅君の気持ちが伝わって来た気がした。
「すみません。注文いいですか?」
カウンターの反対の側のお客さんから声が掛かり、すぐに雅君が離れて行った。
今日は平日のせいか、静かに飲んでいるお客様が多い。
雅君をミヤビと呼ぶ人たちもいないままで。
ここは居心地の良い空間だった。