SECRET COCKTAIL
「お客様、申し訳ありませんが、こちらではそのような対応は」
「固い事言わないでさ、頼むよマスター」
カウンターのお客さんとのやり取りが聞こえてきて、チラリとそちらに目を向けた。
めずらしい。
雅君がお客さんの要望に、表情を曇らせている。
どうしたのだろう。
何度かやり取りを繰り返してから、その内諦めたように頷いて雅君はカクテルを作り始めていた。
メニューにないオーダーでもされたのだろうか。
だけど、雅君がこんな風にお客さんに難色を示すのは珍しい。
そんな事を思いながら、私は明日のプレゼンの資料に目を落としていた。
明日のプレゼンは、失敗できない。
そう思ったら、リゾットで癒された身体に再び緊張が走った。