SECRET COCKTAIL


「あれ、ごめんなさい。お客さんだった?」


驚いた表情で動きを止めて。

ぺこりと頭を下げる男の人を呆然と見つめてしまう。



だって、今、兄貴って。



「いいんだ、優弥(ユウヤ)。こいつは客じゃない。で、どれ?出来たのかよ」


「え?客じゃないって、なに?大丈夫?」


戸惑うその人をお構いなしに、雅君はその人の身体を押しながら厨房へ消えて行った。

奥でなにやら話し声が聞こえてきて、しばらくすると雅君が戻って来る。


「悪いな。あいつ、俺の弟」


「やっぱりそうなんだ」


雅君より短い髪の毛で。

まだどことなく幼さが残っているような気がするけれど。

骨格も、涼し気な目元も、雅君に良く似ていた。

< 322 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop