SECRET COCKTAIL
「あれ、ごめんなさい。お客さんだった?」
驚いた表情で動きを止めて。
ぺこりと頭を下げる男の人を呆然と見つめてしまう。
だって、今、兄貴って。
「いいんだ、優弥(ユウヤ)。こいつは客じゃない。で、どれ?出来たのかよ」
「え?客じゃないって、なに?大丈夫?」
戸惑うその人をお構いなしに、雅君はその人の身体を押しながら厨房へ消えて行った。
奥でなにやら話し声が聞こえてきて、しばらくすると雅君が戻って来る。
「悪いな。あいつ、俺の弟」
「やっぱりそうなんだ」
雅君より短い髪の毛で。
まだどことなく幼さが残っているような気がするけれど。
骨格も、涼し気な目元も、雅君に良く似ていた。