SECRET COCKTAIL


「へぇ、美來ちゃん、明日プレゼンがあるんだ」


「はい、初めての大きなプレゼンだから緊張しちゃって」


「そう。じゃあ、俺が教えてあげるよ。プレゼンの時の秘訣はね」


取り留めない会話の中に、暗に早く帰りたいという事を匂わせてみても。

藤井と名乗ったその男性は、気付く事もなくプレゼンの秘訣とやらを語りだす。


話をしたい、と声を掛けて来た彼だったけれど。

ひたすら、彼の話の聞き役だった。


彼が飲んでいるグラスには、アルコール度数の高いロックウィスキー。

グラスを傾けるペースは速く、杯数を重ねる度饒舌になっていく。


「美來ちゃん、次何飲む?俺がご馳走するよ」


「いえ、大丈夫です。私、あまりお酒が強くないので」


「そうなの?こんなところに一人で来ているから、強いのかと思った。可愛いね、美來ちゃん」


< 36 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop