SECRET COCKTAIL
片肘を付いてこちらを向いた藤井さんは、右手で私の髪に触れた。
酔っているんだろう。
細められた瞳が、とろんとしていてアルコールの酔いを感じさせた。
頬に触れた指先に、ぞくりと嫌悪感が走る。
びくっと僅かに距離を取ったけれど、何を勘違いしたのか相手は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「本当に、可愛い」
助けを求めるように雅君の姿を探すけれど。
雅君はテーブル席のお客さんのオーダーを取っていて、カウンターの中にはいなかった。
でも、雅君に助けを求める訳にはいかない。
こんな場面、一人で切り抜けなくちゃいけない。
じゃないと、雅君に言われてしまう。
もうここには来るな、と。
私が、最も言われたくない台詞を。