SECRET COCKTAIL
相変わらず無表情なのに、どことなく不機嫌そうなオーラを醸し出す雅君にそのまま話しかけられずにいたけれど。
「帰れば?」
すぐに聞こえた身が凍るような冷たい声に、ずきりと胸が痛むのを自覚した。
もしかしたら、怒っているのだろうか。
咄嗟に返事をする事が出来なくて俯いていると、追い打ちを掛けるように目の前から溜息が聞こえた。
雅君に会いたいだけでここに来ていても。
こんな場面でしっかり対応する事もできなくて。
まだまだ私は、お酒も似合わないお子様で。
雅君に釣り合う様な存在には到底なれない。
雅君にとっては、きっと面倒な存在でしかないのだろう。
そんな自虐的な思考に陥って、ますます気持ちが沈む。
だけど。
「今のうちに帰った方がいい」
次に聞こえたのは、先程の冷たさは感じられない、労わるような声だった。