SECRET COCKTAIL
「え、でも」
「ちゃんと断らなかった俺が悪い。困らせるつもりじゃなかった」
「そんな、雅君のせいじゃ、」
「藤井さんの事は気にしなくてもいい。俺から上手く言っておく」
「・・・いいの?」
「お前がいたいならいればいい。だけど、あの人酔ったらしつこいから、このままだと面倒な事になるぞ」
雅君との時間のためだったら勿論ここに居たいけれど。
また藤井さんの相手をする事になるのなら、今すぐここを離れたかった。
だけど、相手はこの店のお客様だ。
そんな事をしてしまったら、少なからず雅君に迷惑が掛かってしまうかもしれない。
そんな風に思って、雅君を見上げると。
「明日、大事な仕事があるんだろ。早く帰って休めよ」
思いの外穏やかな表情で優しく笑みを浮かべた雅君がそこにいて、魅入られるようにすんなり「うん」と答えてしまっていた。