SECRET COCKTAIL
「いらっしゃいませ」
ここ数日間聞きたくてたまらなかった低音の彼の声が、心地よく耳に届いて胸がきゅっと音を立てた気がした。
この扉のすぐ向こうに、会いたかった人がいるのに。
足がこの場に縫い付けられてしまったかのように動けない。
「二人なんですけど、良いっすか?」
「ええ、どうぞ」
なんだろう。
このどことなく後ろめたいような展開。
この時間を待ちわびていたのに、なんだか顔を出しづらい。
見られたくない、なんて思ってしまうのは。
勝手な私の貞操観念。