SECRET COCKTAIL
「何やってんの、木戸?入んねぇの?」
「あ、うん。ごめん、やっぱり、今日は」
「あー、すみません。カウンターじゃなくて、テーブルでもいいっすか?」
多田君は店内を見ながらそう言って、断りかけた私の言葉を遮るようにして左腕を掴み、店内へ引き入れてしまった。
見慣れた店内が視界に映る。
雅君は。
カウンターを出て、テーブル席へ向かっていた。
きっと私たちのための席なのだろう。
その席を素早くセットしてから、彼がゆっくりと振り向くのが見えた。