SECRET COCKTAIL
「え、何?今の」
意味が分からない様子できょとんとした表情を浮かべる目の前の彼。
私と雅君のいつものやり取りを知らなければ、何が起きているのか分からないのは当然だ。
苦笑いを浮かべる事しかできない私に、多田君が何かを察したようだった。
「なに?知り合い?」
「うん、まぁ、ちょっとね」
「へぇ、そうだったんだ」
何か含みを持たせたような言い方をして、多田君はカウンターに視線を向けた。
カウンターの中には、当然雅君の姿。
グラスを取り出して、カクテルを作る準備をしている。
やがてシェイカーを振るリズミカルな音が店内に響く。
いつも座っているカウンターより遠い距離で見る彼の姿は、更に近寄りがたい雰囲気を感じさせた。