SECRET COCKTAIL
「いるよ、好きな人」
それはまるで、重大な告白するときのような真剣さを含んだ、ピンと張りつめて聞こえる声音だった。
余程大切な想いなんだ、と伝わって来るような空気感がそこにはあった。
「そっか。そうなんだ。私、知ってる?会社の子?」
「まぁ、そうかな」
「じゃあ私も、いつでも話を聞くよ。話しても良いって思えるようになったら、なんでも相談に乗るからね」
好きな相手が会社の人なら、今は興味本位に聞くべきじゃないだろう。
多田君が私を信用して、話してくれるようになるまで待つべきだと思ってそう言うと。
「・・・ああ、そうしてくれると嬉しい」
と、なんだか嬉しそうに優しい顔で微笑んだ。
それからは、お互い心の中の秘密を打ち明け合ったせいか、不思議と会話が弾んだ。
多田君とこんなに気が合うなんて思わなかった。
今までは仕事上での付き合いしかしていなかったから、どことなく壁があったのだと思う。
自分の世界を狭めていたのは、私自身だったんだ。