SECRET COCKTAIL
「眠いんだろ」
ハッと気が付くと、新しく目の前に置かれたカクテルグラスと、ビアグラスが見えた。
いつの間にか雅君がすぐ傍に立っていて、自分が少し眠ってしまっていたのだという事に気が付いた。
「雅君・・・」
「無理すんなよ」
そっけなくそれだけ言って、背を向けてしまった雅君になぜか切なくなって。
つい呼び止めたくなってしまったけれど。
そこでトイレから出て来る多田君が視界に入って、なんとか思い止まった。
雅君とすれ違う時、その後を追うように多田君が一瞬振り返っていたのが見えた。
一旦立ち止まっていた彼はすぐに視線を戻して、こちらへ戻って来る。