SECRET COCKTAIL
campari and orange
雅君に出会ったのは、高校一年の時だった。
「ただいまぁ」
学校から帰って来て、自宅玄関の扉を開けて声を出しても。
声が聞こえていないのか、家の中から誰の返答も聞こえて来なかった。
家の中には人の気配がするから、誰もいない訳ではないのだろう。
実際玄関には、兄の物以外に見慣れない男物の靴が何足かあって、誰かお客さんが来ているのだろうという事は窺い知れた。
大方、兄の友達でも遊びに来ているのだろう。
友達の多い兄は、昔からこうして友達を家に招く事が良くあった。