SECRET COCKTAIL


「どうした?どこか怪我した?」


黙ったままの私を気遣うように、顔を覗き込まれたけれど。

階段の途中にある窓から差し込む陽の光と重なり、まるでその人自身が光を放っているように見えて、眩しさに目を細めた。


「ホントに大丈夫?」


再度問い掛けられて、弾かれた様に身体が動く。


「はい、大丈夫です」


答えてから、自分の手が相手の服を掴んだままだという事に気が付いて慌てて手を離した。


「あ、すみませ、」


言い掛けた言葉を飲み込んでしまったのは、相手から手を離したというのに身体を離す事ができなかったから。

どうして、と思ったのは一瞬で、すぐに状況を理解した。


相手の腕が、まだしっかりと私を支えてくれていたのだ。


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