SECRET COCKTAIL


私が向けた視線を追って相手も同時に状況を把握したらしい。


「あ、悪い」


無意識だったのか我に返った様にパッとすぐに手を離し、何もしないと言う様に小さく両手を上げた。


たった今まで触れていた熱が離れていって、それにどこか物足りなさを感じてしまった自分がいて。

その感情を自分で認識した途端、戸惑いと動揺で自然と両頰が熱を持った。


「驚かせてごめんな」


バツの悪そうな表情を浮かべてこちらに視線を寄越す相手を再認識して、更に頰が熱を持つのを自覚した。


だって、目の前にいるその人があまりに端正な顔立ちをしていたから。


高校生になったばかりの私の周りにはいるはずのない、大人びた雰囲気を持つその人。


くっきりとした二重瞼の双眼は鋭さを感じる位に涼やかで。

その人の視界に自分が入っている事に羞恥を感じてしまう程美しく透き通って見える大きな瞳。


私だってお兄ちゃんがいるから、年上の男性にある程度免疫があると思っていたけれど。

その免疫が役に立たないと思える程、次元の違う容姿をしていた。

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