強引な彼の求愛宣言!
《おう、酔ってる酔ってるー! つーかおまえは今なにしてんだよ! まさか華の金曜日に直帰して家にいるとかじゃないよなー?》

「そのまさかですよ……今まさにお風呂から上がったところです」



答えつつ、ドライヤーで乾かしたばかりのボブヘアーに手ぐしを入れる。

《マジで?!》とスピーカーから松岡さんの大きな声が聞こえて、思わずスマホを耳から遠ざけた。



《深田おま、さみしいやつだな~~》

「ほっといてください……」

《よしよし。そんなさみしい深田に、今日は俺がおいしい酒をおごってやるよ》

「え。今からですか?」



つい、壁にかけてある時計を確認してしまう。

現在時刻、夜9時過ぎ。大人としては、そんなに遅い時間でもないけどさあ……。



《おう、もちろんもちろん。深田も知ってる、本部近くの居酒屋にいるからさー。今から来い!》

「えー……私もうお風呂も入っちゃったのに」

《タクシー代も出してやるから! 絶対来いよー!》



言うだけ言って、松岡さんは電話を切ってしまった。

すぐ後にメールが届き、そこには今彼がいるという居酒屋の名前と簡単な場所の情報が書いてある。



「……もう」



思わず、小さなため息がもれる。

それでも私はベッドから立ち上がって、クローゼットの前へと足を進めた。

強引すぎる誘いではあるけれど、行かなきゃ行かないで面倒くさいことになりそうだし。

それに私だってせっかくの華金、外出して楽しく過ごしたいという気持ちはあるのだ。おごってくれるとのことだし、お言葉に甘えようっと。
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