強引な彼の求愛宣言!
私と目が合ったその人が、ふわりと微笑む。



「こんばんは。……“美人声の深田さん”」

「っへ、あ、こんばんは……え?」



頭の中が真っ白なところに話しかけられて、一瞬反応が遅れてしまった。

それから言われたセリフに疑問を覚えて思わず首をかしげれば、その人物──武藤さんが、また小さく笑う。



「前、ウチの会社の若い奴が宮信さんに電話かけたとき、応対してもらった深田さんのこと『すごい美人声!』ってベタ褒めしてたから。俺もそう思うし」

「え……ありがとう、ございます……?」



状況がよく飲み込めないままだけど、とりあえず褒めていただけたことはわかったのでお礼を言った。

私たちのやり取りをなぜか含み笑いで見ていた松岡さんが、「まあ座れよ」と自分の左隣りにある座布団を叩く。



「お……おじゃまします……」



素直にその場所へと腰をおろしながらも、私の頭の中は混乱マックス。


なんで、ここに武藤さんが?? 松岡さんと知り合いなの??

ていうか、武藤さん私の名前知っててくれたとか……!! うれしすぎて吐きそう!!

ハッ、それより私、今めっちゃ化粧薄い!!! やばいやばいやばい、武藤さんと会うってわかってたら、もっとちゃんとメイクしたのに……!! これだから私はツメが甘いんだちくしょう30分前からやり直したい!!!
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