強引な彼の求愛宣言!
「深田、とりあえず生でいい?」

「あ、お願いします……」



通りすがりの店員さんに、松岡さんはパパッと私のビールを注文してくれた。

それから改めて、こちらに向き直る。



「深田も知ってるだろ? 東明不動産の武藤。コイツ、俺と同級生で大学時代からの友達」

「え……あ、そうなんですか」



まさかまさかの事実に、驚きすぎて逆に反応が薄くなった。

えー、このふたり友達だったんだ。

松岡さんと同級生ってことは、武藤さんは今年30歳? 私より3つ年上だ。



「で、今日は久々に会ったんだけど、コイツがウチの永田支店とよくやり取りしてるっていうからさあ。じゃあ深田のことも知ってるだろってことで、いきなりおまえを呼んでみた」

「そういう事情は、電話のときに言ってください!」



何が『呼んでみた』だ……! 心臓飛び出るかと思ったわ!!

思わず食ってかかるけど、松岡さんはまったくこたえる様子もなく。

わははと豪快に笑って、軽ーく私の頭を叩いた。



「いやー、おまえのそういう反応が見たくてつい。まあまあ、ここはおごってやるから勘弁しろよ」

「もう……っ」



ほんと、松岡さんはいつもこう。かわいがってくれてるのはわかるんだけど、同時におもしろがられてることも知ってるから、ひとこと文句を言ってやらなきゃ気が済まなくなる。

あ、しかも今は、憧れの武藤さんの前だというのに……! ついいつもの調子でしゃべっちゃったじゃない松岡コノヤロー!
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