強引な彼の求愛宣言!
そっと、斜め向かいにいる武藤さんに視線を向けてみる。

目が合った彼は片ひじで頬杖をついたまま、にこりと笑みを浮かべた。


……っく、やっぱりかっこいいこのひと……!



「そういえば、深田さんとはちゃんと自己紹介したことなかったね。……株式会社東明不動産の、武藤 文哉(むとう ふみや)といいます。よろしく」

「あ、宮園信用金庫の、深田 麻智です。こちらこそよろしくお願いします……」



キチッとしたお辞儀つきで始まった自己紹介に、私もあわてて同じような動作を返す。

むとう、ふみやさん。それから、歳は私よりも3歳上。

思いがけなく、知りたかったプロフィールをゲットしてしまった。何これなんのドッキリ……。



「お、来た来た深田のビール。ほれ」

「すみません、ありがとうございます」



店員さんからジョッキを受け取った松岡さんが、私に手渡ししてくれる。

彼らは、仕事帰りにまっすぐここに来たのだろうか。そろって下はスーツで、上は腕まくりしたワイシャツ姿。

松岡さんも武藤さんも、私と同じ生ビールのジョッキが手元にあった。改めて3人で乾杯した後、緊張からのどがカラカラだった私はぐいっと中身をあおる。



「深田さん、いい飲みっぷりだねー」



枝豆の器をこちらに渡してくれながら、武藤さんが楽しげに言った。

う、ここは、かよわいオンナノコっぽくちびちび飲むべきところだったかな……。

というかそもそも、ビールじゃなくかわいらしいカクテル系を頼めばよかった?


とたんに恥ずかしくなりながら、私はぎゅっとジョッキを両手で握りしめた。

内心の後悔はおくびに出さず、笑顔を作る。
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