強引な彼の求愛宣言!
初めて来たこのお店のお酒はおいしいし、おつまみもおいしい。

そして、テーブルを挟んだ向こうには武藤さん。

これ以上何か望んだら、きっとバチが当たっちゃう。



「深田さんって、お酒強い方?」

「うーん、まあ、弱くはないですね。一定量超えると、急にへにゃへにゃになっちゃうんですけど」

「ふふ、なにそれ。へにゃへにゃ?」

「はい。へにゃへにゃです」



レモンサワーのグラスを握りしめ、真面目くさった表情でこくりとうなずけば、私の言い方がおかしかったのか武藤さんがくすくす笑う。

こんなに、近い距離で。仕事と関係なく他愛ない話をしてくれる武藤さんは、思っていたよりずっと気さくな人だった。

……そして何より、やっぱり私好みの素敵な声。



「三木さんって、仕事の話で会うときいっつもクールだけど、普段もあんな感じなの?」

「あんな感じです。標準装備です。でも私の見立てでは、彼女の前ではきっと絶対あまあまなんですよめろめろに」

「あはは、想像できねー」

「深田、さっきからオノマトペ多いな」

「松岡さんは、彼女さんにヘコヘコって感じ」

「あーわかる」

「おまえらなあ……」



楽しい。ふわふわする。

だって私の目を見て、武藤さんが笑ってくれる。今まで電話でちょっと話すだけが精一杯だった彼が、すぐそばにいる。



「おーい深田、正気保ってるかー」

「……ん? あ、はい。だいじょうぶれす」

「呂律まわってねぇぞー」

「ふふ。かわいいねー深田さん」

「なに……なにを、言っておられますか武藤さん……」

「はは、眠そう」



……ああ、私。

もっとこのひとと、仲良くなりたい、なあ。
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