強引な彼の求愛宣言!
「──大丈夫? 深田さん」



やさしげな瞳を心配そうに細めて、武藤さんが私の顔を覗き込む。

私はただ、こくりとうなずいた。



「ハイハイ、お待たせー。ったく、容赦なく飲みやがっておまえら」

「松岡男前。抱かれてもいい」

「真顔で気持ちわりーこと言ってねぇで、今度おごれよおまえは」



会計を終えて私たちが待つ店の外に出て来た松岡さんが、呆れたように武藤さんを小突く。

ごちそうさまです、と松岡さんに向かって頭を下げようとしたのだけど、足元がふらついて男性ふたりが同時に支えてくれた。



「深田ぁ、さすがに今日はやばいぞー」

「にしても、犯罪的にひどい話だな。男ふたりの中に唯一いる女性を、こんなになるまで酔わせるとか」

「いや、酒勧めまくってた本人が言うセリフじゃねぇぞそれ。ひどいのはおまえだ武藤」

「だって、へにゃへにゃな深田さんを見てみたくて。つい」

「……おまえさー……」



私を間に挟んで、ふたりが何やら会話をしている。

会話してるのはわかるんだけど、どうにもその話の内容が、頭に入って来ない。

私は両腕を掴んでくれている彼らの手をやんわり振り払って、なんとか自分の足で立った。



「おふたりとも、今日はありがとうございました。松岡さん、ごちそうさまです」

「おお。こっちこそ、いきなり呼んで悪かったな」



ぽんぽんと、松岡さんが私の頭を軽く叩く。

すると武藤さんが、何の前触れもなく松岡さんにデコピンを食らわせた。なぜに?
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