強引な彼の求愛宣言!
「いってぇな武藤!! 何すんだ!!?」

「深田さん大丈夫? ちゃんと帰れそう?」



怒れる松岡さんを完全スルーの武藤さんが、身を屈めて訊ねてくる。

こくり。私はまた首を縦に振った。



「余裕です。札勘もノーミスでできます」

「さつかん?」

「紙幣の枚数を数えること。……こりゃダメだな」



そう言って松岡さんがため息をつくから、私はムッとする。



「もう何年やってると思ってるんですか。縦読みも横読みもドンと来いですよ」

「そこじゃなくてだな……」

「深田さんって、家どのへんなの?」



私に関する質問なのに、武藤さんはなぜか松岡さんに訊ねた。

そして松岡さんも、普通に答える。



「俺んちの反対方向。それしかわかんね」

「ってことは、俺と同じ方向か」

「……いや、待て。武藤には任せたくない」

「なんで。失礼だなおまえは」



そう言った武藤さんは、たぶん、満面の笑みだったと思う。

彼はそのまま、ぐいっと私の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。



「さっき松岡、彼女から連絡来てなかった? 早く行ってあげた方いいんじゃない?」

「……行くけどさあ」

「深田さんは、俺が責任持ってちゃんと家に送ります。酔ってるコに手ぇ出すほど、見境なくないし俺」



そうだよなあ。武藤さん、紳士だもんなあ。

彼に肩を掴まれたまま、ぼーっとふたりの会話を聞いていた。

松岡さんが、さっきよりも深いため息を吐く。
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