強引な彼の求愛宣言!
「……わかった。本気で、頼むぞ」

「了解。じゃ、またな。ヘコヘコの彼女によろしく」

「ひとこと多いっつの。深田、送れなくて悪いな。帰って早く寝ろよ」

「……松岡さん、お疲れさまでした」



私の言葉に肩をすくめ、松岡さんは片手をあげながら歩いて行った。

ポケットからスマホを取り出し、耳にあてている。遠ざかっていくその背中をぼうっと見つめていると、視線を剥がすように腕を引かれた。



「俺らも帰ろうか。今の深田さんの感じじゃ、2軒目ってわけにはいかないもんな」

「……はい」



私を見下ろして苦笑する武藤さんの言葉に、素直にうなずいた。

なにしろ、こうしてる今も眠くて眠くて仕方ないのだ。

さっきは強がったけど、やっぱり今の私はそれなりに酔ってしまっているみたい。


日付が変わる少し前の金曜日。わざわざ探すまでもなく、繁華街にはたくさんのタクシーが行き来している。

道路沿いに立った武藤さんが片手を上げれば、間もなく1台のタクシーが目の前に停車した。



「深田さん大丈夫? 気持ち悪くない?」

「だいじょうぶ、です」



車が発進してすぐ、武藤さんが訊ねてくれる。

……やさしいひと、だなあ。

今日はこのままお別れ、なんて。仕方ないことだけど、やっぱりさみしい。

まず松岡さんの前っていうのが、気持ちにブレーキをかけてたとはいえ。はしたないとか思わないで、もっと、がんばってアピールすればよかった。

そうしたらもしかして、次の約束ができたかもしれないのに。
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