強引な彼の求愛宣言!
「深田さん?」

「あ、はい!」



開けっ放しのドアの向こうから武藤さんの声が聞こえ、あわてて返事をする。

ミラーをしまってバッグをひっつかみ、そろりと寝室のドアから顔を出した。



「こっち、好きなところ座って」

「はい」



武藤さんがいたのは、寝室よりも広いフローリングの部屋。おそらくここが、リビングダイニングなのだろう。

ソファーの前にあるテーブルに、コーヒーやパンが並べられていた。



「ごめん、朝ごはんになるものバターロールくらいしかなかったんだけど、食べる?」

「い、いただきます……」



わあああ、何から何まで申し訳ない……。

罪悪感で縮こまりながら、武藤さんが勧めてくれたテーブルの前に腰をおろす。

私がついたのは、ソファーの真向かいに位置するところだ。

コトリと、目の前にマグカップが置かれた。



「あ……」



つい、小さな声がもれる。

だって、マグカップの中身はとろりとした茶色の液体で。

そういえば昨日──デザートのバニラアイスを食べていたときに「甘いものは大好きだけど、コーヒーは砂糖なしでミルクたっぷり」って、私言ったっけ。



「いただき、ます」



……武藤さん、覚えててくれたんだ。

じわりと胸の中にあたたかいものが広がるのを感じながら、コーヒーをひとくち飲み込む。

彼が淹れてくれたコーヒーはまさに私の好み通りの味で、ますます武藤さんに対する憧れが募っていく。
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