強引な彼の求愛宣言!
その言葉が終わったか終わらないかのうちに、ぐっと肩を押された。

なすすべもなく、私の身体は後ろに倒れ込む。

気付いたときには、天井を背にした彼に真上から見下ろされていた。



「……む、とう、さん」



どくどくと、心臓がありえない速さで鳴っている。

ついさっきまでコーヒーを飲んでいたはずなのに、もうのどがカラカラだ。武藤さんはそんな私の頬を撫でて、目を細める。



「無防備に、コーヒーなんて飲んじゃって。俺にまったく、そんな気がないとでも思った?」

「ッ、」

「きみは今、極上の据え膳。さて、どうしようかな」



つつっと、彼の指先が私のひざをなぞった。

その感触に思わず背を反らせ、もれ出そうになった声は必死で飲み込む。


……うそ。こんなのうそ。憧れの武藤さんが、こんなにはれんちな人だなんて!

ああこれは、夢に違いない。飲みすぎて、二日酔いの中見ている悪夢。

じゃなきゃ、ザ・さわやか好青年な武藤さんが、こんな──……。



「もしかして、これは夢かもとか思ってる? 残念だけど、リアルだから。俺の性格が悪いのもきみがまんまと外面に騙されてたのも、現実だから」



にっこり笑顔の彼が、現実逃避な私の思考を一蹴する。

なんで私が考えてることがわかるの……?! このひとエスパー!!?


もはや半泣きな私と対照的に、真下から見上げた武藤さんはとても楽しそうだ。
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