強引な彼の求愛宣言!
ぎりっと奥歯を噛みしめて、苦くつぶやいた。

そんな私に、やはり武藤さんは綺麗な微笑。



「深田さん、この状況ちゃんとわかってる? 今きみ、俺にどうとでもされちゃう体勢なんだけど」



そう言った彼がやわく私の耳を食むから、身体中に電流が走ったかと思う。

過剰なくらい肩をはねさせる私に、くつくつと彼はのどを鳴らした。



「耳弱い? そういえば、俺の声のこと言ってたしね」

「……っう、」

「タクシー降りて、きみがベッドで本格的に寝るまでに『いい声ですねぇ』って10回くらい言われたかな」



ゆうべの私……!! 本音とはいえ自重して!!

武藤さんの口から語られるあまりの愚行に、過去の自分をひっぱたきたくなる。

なんかもう、この調子じゃ私の方こそ武藤さんに変なコトしてそうな感じですけど!



「深田さんは、俺の声が好きなんだろ?」



やけに自信満々に、というかむしろ事実を確認するみたいに武藤さんが言う。

もしかして私、ハッキリ『武藤さんの声が好き』って自分で言ったの? 馬鹿なの?

ありえない。穴があったら入りたい。



「……そうですね。あなたの声は、好きです」



私はもうやけくそで、あくまで視線は逸らしながらそうつぶやいた。

ふぅん、と、彼が鼻を鳴らす。
< 30 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop