強引な彼の求愛宣言!
今自分を押し倒している人物は、私のことがすきなわけじゃない。

ただ、簡単にお持ち帰りできたから。ただ、目の前にいるから。

きっとそんな理由で、こんなことをしてるだけなはず。

だから私は、そんな彼を拒否するべきなのに。


彼の声で、名前を呼ばれたとき。冗談じゃなく、心臓が止まるかと思った。

まるで麻薬みたいに、私の脳をおかしくする声。私の心を、揺さぶる声。

そんな声で迫られたら、もう。


観念して私が身体の力を抜きかけた、その瞬間。

突然すぐ近くからスマホの着信音が聞こえて、ビクッと身体が震えた。



「むっ、武藤さん……! スマホ! 電話! 鳴ってますよっ!?」

「………」



何度も繰り返し鳴るベルの音。明らかに電話の着信だ。

これ幸いとばかりに目の前の彼に訴えかければ、武藤さんはめちゃくちゃ苦い顔をしてようやく私の上から退いた。


た、助かった……! 危うく流されるところだった……!

あわてて起き上がりながら、胸に手をあて己を落ち着かせる。

武藤さんはディスプレイを見てさらに嫌そうな顔をした後、しぶしぶといった様子でスマホを操作した。



「……もしもし」

《もしもしもしーー!! こちら性格クソ悪い武藤さんのケータイですかーーー!!?》



この距離でも聞こえる。電話の相手は、松岡さんだ。

あまりの大声に1度スマホを耳から遠ざけるようにしてから、武藤さんがため息を吐いて再び耳にあてる。
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