強引な彼の求愛宣言!
「これね、積立が満期になったから、手続きして欲しいんだけど」



……おっと。これは、ハイわかりましたと今ここで受け付けていいものじゃない。

私は窓口の中央にある受付カード発行機を手のひらで示しながら、控えめな笑みを浮かべる。



「申し訳ございません。恐れ入りますが、受付カードを引いて少々お待ちいただいてよろしいでしょうか?」



まあ、“カード”とか言いつつレシートのペラい紙なんだけど。

たいていのお客さまは、この言葉に「わかりました」と応じてくれる。

けれどもこの女性の場合、そうはいかないらしい。とたんにその眉が、不機嫌そうに歪められた。



「なんでよ? 私いっつもここ来てるけど、そんなの言われたこと一度もないわよ」



うそでしょ~~ここで食い下がってくるかあ。

たぶん、『一度もない』っていうのは言い過ぎだと思う。でも記憶をたどると、この方が過去に来店したときは他に待っているお客さまがいなくて、受付カードを引いていなくても「どうぞー」と窓口に誘導することが多かったような気もする。

うーん、今日は待ってる人が他にもいるんだけどなあ。

内心の困惑は表に出さないよう、努めて感じ良く答える。



「申し訳ございません。今は、先にお待ちのお客さまもいらっしゃいますので……」

「私、若いときからここ使ってんのよ? 常連なんだからサービスしてくれたっていいんじゃないの?」



今ロビーで黙ってお待ちいただいてるみなさんも常連さんですよ~~あなたにサービスするためだけに他のお客さまの処理を放置するわけにいかないんですよ~~。

思いっきりため息をつきたい衝動を、薄く浮かべた笑顔の内側でなんとか飲み込む。
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