強引な彼の求愛宣言!
「たいへん申し訳ございませんが、受付カードの番号順にお手続きさせていただいておりますので」

「いいから、私のを先にやりなさいよ!」



がちゃん、と盛大な音をたてて、女性がカウンターにハンドバッグを乗せた。

……まいったなあ、この人引いてくれそうにない。こんなときに限って、後ろにいる次長もなんだか長引きそうな電話の対応してるし。

支店長も、融資担当の役席も今は外出中だ。上司の手を借りず、この場は自分でおさめる他になさそう。



「お客さま、」

「それとねえ、ここ最近どこも利率下がりすぎなんじゃないの? 引かれる税金も増えてるし、こんなんじゃ定期預金なんて作ろうって気にならないわよ」



え~~ここで利率の話まで持ち出すかあ~~。

利率はいち信金職員の私がどうこうできる問題じゃないんですよ~~リーマンショック以降ネット銀行はともかくどこの金融機関も軒並み利率が下がっていまだに低迷してるんですよ~~。


現状を打破できる可能性が見えなくて、そろそろ表情筋が引きつりそうだ。

もうこのまま話を聞き続けてるうち、素直に待ってくださっている他のお客さまの手続きも終わってしまうんじゃないだろうか。

曖昧な笑みで女性の話に相づちを打ちながら、どうしたもんかなあと私が内心困り果てていたそのとき。
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