強引な彼の求愛宣言!
……助かった。


張りつめていた緊張が解け、そのまま気が抜けたように椅子に腰をおろす。だけどすぐハッとして、次に待つお客さまのため呼び出しボタンを押した。

両替のお客さまから伝票と現金を受け取り、身体に染み付いた処理をする。


その後も問題なく、全体の手続きは進んで。先ほどごねていた川井さんは、1番奥まった窓口の白石さんが受け付けた。

次いですぐ、真ん中の窓口に座る主任が武藤さんの番号を呼び出したけれど。彼はカウンターに受付カードを置くと、困ったような笑みでぺこりと会釈だけして窓口を離れた。

私の前も通り過ぎ、歩いて行く武藤さん。彼はそのまま、三木くんがいる融資窓口へと向かった。



「すみません三木さん、お待たせして」

「とんでもないです。こちらこそありがとうございました。あそこで下手に別の職員が出ると、角が立つので」



声をおさえた会話が、かすかに耳に届く。

そのやり取りで、すべてを理解した。


……私を、助けるために。

わざわざ武藤さん、あのお客さまに話しかけてくれたの?

融資の方と約束していただけで、預金窓口には用事なんてなかったのに。

あんなふうに、受付カードまで引いて、お客さまの会話にも付き合って。



「──ッ、」



彼が私にしてくれたことを知ったとたん、ぎゅっと胸が締めつけられて、だけども不思議と何かが満たされていく。

テラーズマシンのキーボードを打つ手が震えそうになるのを、くちびるを噛みしめて耐えた。


……ああ、私。

私、やっぱり、彼のことが──……。
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