強引な彼の求愛宣言!
◆ロマンスな夜
◆5
シルバーの車が目の前に止まる。
約束の20時までは、あと10分ほど時間があった。けれどその車に見覚えがあった私は、すぐに運転席を確認する。
予想通り、ドアを開けて車内から出てきたのは昼間会ったばかりの武藤さんだ。
「ごめん深田さん、待たせちゃって」
「いえ、さっき来たところです」
言いながら私は笑みを浮かべようとしたけれど、果たしてうまく笑えていたかどうかはわからない。
わざわざ外側から助手席のドアを開けてくれた武藤さんは、仕事帰りなのかスーツのままだ。緊張マックスだけど、相変わらずスーツが似合いすぎているその姿に惚れ惚れしてしまう。
「どうぞ、深田さん。乗って?」
「あ、はい……ありがとうございます」
一応お礼は言えたけど、たぶん動きがガッチガチだ。
そんな私を見て、ふっと彼が口元を緩めた気がした。うう、緊張しまくってるのたぶんバレてる……。
おじゃまします、とつぶやきながら、車内に足を踏み入れる。
シルバーのレヴォーグ。武藤さんのこの車に乗るのは、前回送ってくれたときと合わせて二度目だ。
まさか、また助手席に座れる日が来るなんて。
「おなかはすいてる?」
運転席のドアを閉めるなり、武藤さんが問いかけてきた。
きっと彼は仕事帰りだろうし、空腹のはず。
私は一度家に帰ってはいるけれど、昼間彼と会ってからずっと今夜のことが気になっていて。今だって正直いっぱいいっぱいだから、なんとも……。