強引な彼の求愛宣言!
◆サプライズな夜
◆2
思えば、私はこれまで幾度も大事な場面で自分の迂闊さを実感させられてきた。
学生時代、テストの解答欄が1個ずつずれていて赤点すれすれの点数を取ってしまったり。
意中の彼にアプローチしようとまずは友人としての関係を地道に確立している間に、すきな人には彼女ができていたり。
考え出したら数えきれないほど。私はどうにも、ツメが甘いらしい。
「…………」
夜も深まって来た頃。私は自室でぶるぶると震えるスマホを手に、しばし逡巡していた。
バイブとベルの音で、電話の着信を知らせるディスプレイ。
そこには会社の先輩、【松岡さん】の名前が表示されていた。
……なんだか、嫌な予感がする。いやむしろ、嫌な予感しかしない。
松岡さんというのは、私が今年の3月までいた支店で一緒だった先輩職員だ。
体育会系のノリを地でいく男性で、無駄にでかい身長に無駄にでかい声。
いい人ではあるんだけど、たまに強引すぎてそのノリが面倒くさいときがあるという……。
そしてこうして悩んでいる間にも、電話の着信音は鳴り止まなくて。
ひとつため息をついてから、私はスマホの画面をタップした。
「……はい、もしもし」
《もしもしもし深田 マチコかーー?! おっまえ遅いんだよ出るのが!!》
「深田 麻智です! 松岡さん……酔ってますね?」
思わず呆れた声で訊ねながら、私はベッドに腰かける。
電話の向こうは、がやがやと騒がしい。居酒屋にでもいるのだろうか。