一人より二人
ニュースで見た動物虐待のことや、殺人なんかの悲しい話を、悲しかったんだと話せたらいい。けれど、そんな話したって、という何かがある。暗い話よりも明るい話が求められ、悲しいと思うそれの行方がわからなくなってしまう。
悲しいのか、どうかも。
「そうですね…。でも、璃子さんはそういう話、僕にしてくれますね。自惚れてしまいますよ」
「自惚れてって、またどうして」
「明るい話だけじゃなくて、皆が避けるような暗い話も僕にしてくれるだなんて、僕は璃子さんの特別なんだなって」
特別、か。
そんなの決まっているじゃないか。
彰久さんは、特別な人だ。でもだからといって何でもしてもいいということにはならない。「嫌?やっぱり」と聞けば、「そんなことはありませんよ」と柔らかな言葉が返ってくる。