一人より二人
「僕だってしてるでしょう。ぐちぐちねちねちと」
「ぐちぐちねちねち」
その言い方が面白くて、私も繰り返す。
「ねえ、彰久さん」
何ですか、と声がかかる。
机には借りてきた難しい本が何冊か積み重なっている。床に座って読んでいる本から顔をあげた彰久さんに「無理してない?」といってみる。何故、というような顔をした彰久さんは本に栞を挟みながら、ふっと表情を変える。
「そう見えますか」
「見える、というか…心配になるというか」
「おや、年上らしい」
「どうせ彰久さんより年上ですよー」
大人、といった彰久さんの雰囲気と比べれば私なんて子供だろう。
唇をわずかにとがらせれば、低く笑い髪の毛を弄る。頭を撫でられるだなんていうそれは、私はあまり好きじゃない。昔付き合った人が、こういうの好きなんだろ?とでもいいたげなそれだったからだろうか。
たまに彰久さんもしてくれるが、撫でるよりもこうして指に髪の毛を絡ませて遊ぶことが多い。