一人より二人
「それから僕は施設に預けられました。それでも月に一度とか、親戚の人が様子を見に来たりして、嬉しかった。でも」
「何かあったの?」
「休みになると、その家に泊まりに行くことが出来たんですがね、そこには僕と同じような子供がいて、甘えていました。僕にもそんな風にしてくれるのかと、子供の僕は思いましたが…やはり他人扱いで、何度か泊まってからは嫌になって行かないようになりました。見るのも辛かったし、一応親戚であるのに、他人扱いが堪えたんです。泊まらなくなっても別にどうもありませんでした。施設では同じような境遇の子がいましたし、園長先生は隔てなく接してくれていましたから、親戚などいらないと思ったほどです」
「その園長先生、じゃあ親代わりだったんだね」
「ええ」
彰久さんの手に触れてみる。細い手。私はぷにぷにの小さな手だから、手を繋ぐと余る。
「冷たい親戚よりも、僕は施設の方が過ごしやすかった。だから、高校を卒業してからは、親戚らとのやりとりは完全に途切れました。で、ふらふらとしながら働き、璃子さんと出会ったわけです」
大人っぽくて、柔らかで。
私は彰久さんを、自分より年上だと思った。自分だって二十歳過ぎて少し、というくらいなのに。
様々な経験をしてきたのは、わかる。「ですから」と彰久さんは続ける。