一人より二人
「あの時、璃子さんが言ってくれた言葉が嬉しかった」
「あ、あれはその」
「嘘なんですか?」
「嘘、じゃありません」
――――あの時というのは。
彼は、墓参りに付き合ってくれませんかといった。急だったが、いいよと言った。一人で行くより、璃子さんが一緒だと心強いとかいって。施設で育ったことを聞いていた私は、もしかしたら親なのかな、とか思っても、彰久さんが話してくれるまで待とうと思って何も言わなかった。
すると、そこに人がきた。
おばさんだった。おばさんは一人じゃなくて、旦那さんらしい人と一緒だった。
その人らが、彰久さんを見て驚き、戸惑っていた。彰久君?驚いた。元気だったの。それらの言葉に、彰久さんは答えながら、何だか警戒していた。
おばさんは長々と話そうと、様々なことに踏みいる。今話してくれた施設のことだろう。今ならわかる。だが、今のことを踏みいったとき、『何故貴方に教えなくてはならないのですか』といったのだ。『もう、他人と変わらないのに』と。おばさんは言葉に詰まった。おじさんは『世話になっていてなんて言い方だ』と怒った。『お前のようなものを引き取らなくて正解だ』と。
それには、頭にきた。
『私はあまり事情を知りませんが、あなた方に彰久さんが引き取られなくて良かったと思います。多分、引き取られていたら、今の素敵な彰久さんにはなれなかったと思いますから』