その手をぎゅっと、離さないで

はぁ。

俺は一体何やってんだよ。

桜華にあんなこと言っちまったし…

―――――――――

『おい桜庭、さっきのはどういうつもりだ?』

『さっきのってなんや?』

なんだよこいつ。

ついさっきしたことも覚えてないのかよ。

『桜華に手だしてんじゃねーよ!』

『ちょっと気が狂ってしもた。
柳下にはじゅうぶん謝った。
ってか、なんでお前が怒るんなん』

『怒ってねぇし。
第一、あそこで女に手出すとかありえねぇ』

二人きりだからといって、あれはないだろ。

見るからに桜華、嫌がってたじゃんか。


あの時…

桜華に呼ばれた気がした。

だから桜華たちが乗るゴンドラを見ると二人がキスしてるように見えた。

でもその後の桜庭は土下座してたのか、こっちからはなかなか見えなかった。

『は?僕は柳下が好きなんや!
柳下のこと想ってへんやつに言われたく
ないし!』

『…』

『ほら、そのとおりやろ?』

そのとおりだ。

でも…

でも…

『俺にだって桜華を守る権利はある。
無理に手出すようなやつに言われたくねぇよ』
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