その手をぎゅっと、離さないで
一番知ってると思った光輝が知っていない。
とぼけてるだけ?
噂には超がつくほど敏感なくせに。
「真面目に答えてよ」
「あ〜、ちょっと違うけどな。
大輝が栞を好きなだけだろ?」
やっぱりここまでしか知らない、か…。
っていう顔をしていると、光輝が驚くことを言った。
「嘘、その噂ほんとだぞ」
「…え……?」
『やっぱり』なんて思わなかった。
思えなかった。
あれだけ腹が立ってもまだ残りの数パーセントを信じていたのかな。
「お前が聞きたくなさそうだから、言わなかった
けど、言って良かったかもな?
桜華、スッキリした顔してるしな」
「そ、そう…?」
私、たった今同じ人で二度目の失恋したんだよ…?
でもね、前よりショックじゃない。
確かに、光輝が言ったみたいに少しはスッキリしたかも。
「はあ〜、泣くなって…」
「…えっ……。
なんでだろう、全然悲しくない、っのに…」
やっぱり、数年間想ってた相手に失恋するのは辛いのかな。
自覚はないけど、心は嘘をつかないんだね。
「手かせ、送ってやるから泣くなって!
お空のように元気に家まで帰るぞ〜!」
体育祭の時とは違う温もりを感じる。
こうやって帰るのは初めてだなぁ。
なんか恥ずかしいな。
「うぅ!」
「いってぇー!離すぞ!?」
「あっれれぇ〜?
先に握ったのは光輝だよね〜?」