その手をぎゅっと、離さないで
「俺、部活行きたいから帰るぞ?」
え…。
あ、そっか。
光輝、一年生の時から副キャプテンだしね。
一年の時は二年生がいなくて困ってたもんね。
副キャプは下級生から選ぶって言ってたから。
「あ、ああそうだね。
私もまた今度話すね」
これで、終わり…。
でも足が動かない。
今しかないのに。
これで本当にいいの…?
待って…。
待って、待って…。
お願い…待って…!
「ばーか、なーんてな」
「へ?痛いし!」
デコピンされた。
「お前の話聞く前に俺から言いたいことがある」
戻ってきてくれた…。
これでまだチャンスはある。
光輝の話を聞いてからにしよう。
光輝の話しなんか、どうせつまらないだろうしね。
だから逆に緊張がほぐれていいかな。
「あ、あのさ」
「んー?」
「俺…、じゃ、だめ…?」
「…へ?」